ラベル

2013年5月13日月曜日

白いリボン (2009・墺、独、仏、伊) [7.0/10]

久々の更新になりますが、"愛、アムール"も記憶に新しいミヒャエル・ハネケの前作を紹介します。
第62回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを、また第67回ゴールデングローブ賞にて外国語映画賞を獲得した作品。
全編通して映像はモノクロで言語はドイツ語。
第一次世界大戦前夜のドイツ北部のある村が舞台。
その村で有名な医者が落馬事故により重症を負うところから物語は始まる。
その後も村の中で次々に不可解な事件が起こり、村人たちは疑心暗鬼に満ちていくというのがかなり大まかな内容。
一つ結論を述べてしまうと、この一連の不可解な事件の犯人は最後まで明示されることはない。
また劇中に散布された他の多くの謎も基本的に回収されずに終わる。
しかし観客は誰が何のために何をしているのか徐々に理解していくことになる。
その暗示された事実に触れた時、我々は背筋の凍る思いと共にエンドロールを迎える。
かなり緻密な作りの映画なので、謎が明示されずやきもきする点はハネケの狙いであろう。
描かれるのは一見平穏な村にうごめく薄気味悪さ、狭小かつ排他的な環境下での抑制から生ずる心の捻じ曲がり。
この映画の恐ろしい点は犯行の意図がその抑制への反発ではなく無垢が故の粛正であるところであるといえる。
すべての答えは子供達の目に集約されている。
とにかく登場人物からストーリーまで陰鬱で、モノクロ映像や独特のカメラワークがそれに重厚な緊張感、さらに気味悪さを増幅させる。
室内のシーンで多く見られるがカメラをあまり動かさず、時には被写体が写っていないこともある。
無音のシーンも多く、張り詰めたような空気が144分の映画を支配する。
観たあと気持ちのいい作品とは到底言えないが、是非このホラー映画にも勝る不気味な世界を覗いてみてほしい。