ラベル

2013年4月23日火曜日

カポーティ (2005・米) [7.5/10]

有名な小説家トルーマン・カポーティが代表作「冷血」を世に送り出すまでを描いた伝記映画。
第78回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、フィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を受賞している。
「遠い声 遠い部屋」や「ティファニーで朝食を」で名声を手にしたカポーティが、1959年に発生した一家惨殺事件の記事を新聞で目にするところから物語が動き、その事件に興味を持ったカポーティは幼馴染のハーパー・リーを連れて現地へ赴き、関係者への聞き込みを中心に取材を始める。
一方事件そのものは容疑者が逮捕され収束の方向へと向かうが、ある日保安官の家に収監されていた容疑者の1人とカポーティは対面する。
そしてその容疑者への取材を続けていくうちに、自らの不幸な境遇と近い人生を送ってきた彼に同情心を寄せ、彼の元に足しげく通い彼との交流を深めていく。
カポーティは自らをただ一人の友人と呼ぶ容疑者の死刑執行が延びることを願う一方で、自身の作品を完結させるために早く死刑が執行されこの事件に終止符が打たれることを願う自分との間で葛藤する。
延期を繰り返した後死刑は執行され、カポーティの完成させた「冷血」はノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを提唱し、彼はこの作品で更なる名声を手に入れることになるが、彼はこの「冷血」から作品を一つも完成させることなくその生涯を終える。
この映画はそんなカポーティと容疑者との交流と、彼の中での葛藤にスポットが当てられている。
フィリップ・シーモア・ホフマンがそんな彼の繊細な心情を、これまた繊細な演技で紡ぎ出している。
容姿が本人に似ているだけでなく、彼を想いながらも自らの作品を完成させるために彼を利用し目的を果たそうとする冷酷さ、それぞれの側面とその間での葛藤を浮かび上がらせている。
作品全体のトーンも静か且つ暗く、カポーティという男を一層際立たせている。
「冷血」を完成させるまでの6年間を淡々と描き、ドラマティックな展開がある映画ではないが、じっくり堪能出来る作品です。

0 件のコメント:

コメントを投稿